ヴェネツィア

2017年06月08日

Italyii編集部

知れば知るほど面白い!美味しい!ヴェネト州のお菓子いろいろ

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イタリアのデザートは一般的に「ドルチェ(=甘いもの)」と呼ばれます。イタリア各地に郷土料理が存在するように、ドルチェもその土地ならではの味があるんです。ヴェネト州に伝わる伝統ドルチェにはどんなものがあるのか、ご紹介しましょう。

北イタリアらしいヴェネトの郷土菓子


ヴェネト州を取り囲むのは、ロンバルディア州、エミリア・ロマーニャ州、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州、トレンティーノ・アルト・アディジェ州、そしてオーストリアとの国境。また、ここは18世紀後半までヴェネツィア共和国として存在し、その後フランス、そしてオーストリアの領地になっていた歴史があります。

そういった地形的・歴史的な背景は文化の伝播に大きく影響しますが、それは食文化に関しても例外ではありません。

たとえば、オーストリアのお菓子「ザッハトルテ(チョコレート生地のスポンジにアプリコットジャムをはさみ、チョコレートコーティングしたもの)」はイタリア語読みで「トルタ・サケール」として、また「ストルゥーデル(リンゴやレーズンを薄いパイ生地に筒状巻いた焼き菓子)」なども、特にヴェネツィア以北地域には定番ドルチェとして根づき、今や郷土菓子として親しまれています。


誰もが知るイタリアン・ドルチェの発祥はヴェネトだった!?…ティラミス


今やイタリアのドルチェの代表でもある「ティラミス」 写真:Aki Shirahama

今やイタリアのドルチェの代表でもある「ティラミス」 写真:Aki Shirahama

イタリアを代表するドルチェとして有名な「ティラミス」。

マスカルポーネチーズに卵を加えたクリームをベースとし、コーヒーを浸したビスケット(サヴォイアルディ)とで重ねたものです。シンプルですが、誰からも愛される定番ドルチェとして根付いています。

イタリア語で「ティーラ(引っ張る)」、「ミ(私)」、「スー(上へ)」という、いわゆる「私を引っ張り上げる=元気になる」という語源を持つことは、今や広く習知されていることでしょう。

その発祥には諸説があるのですが、有力説はヴェネト州にあります。

トレヴィーゾという町には、このドルチェのオリジナルを考案したという老舗レストランも存在していました(残念ながら現在は閉店)。メニュー発祥の背景としては、マスカルポーネと卵という滋養に良い主材料を使うことによって、栄養補給的な意味合いを持たせていたとも言われています。

現在では、ベースのクリームに生クリームのホイップを加えるなどして口当たりを軽くしたものや、コーヒーの代わりに別の風味を加えた様々なバリエーションティラミスが登場。ヴェネツィアにはティラミスを主に扱うショップもあり、人気店を集めています。

参考店舗:「イ・トレ・メルカンティ」http://www.itremercanti.it


※トレヴィーゾの関連記事:ヴェネトの冬はこんな野菜を楽しむ。トレヴィーゾ産「ラディッキオ・タルディーヴォ種」


「ポレントーナ(ポレンタ喰い)」の土地ならでは、の伝統ドルチェ…ピンツァ


素朴な味わいの「ピンツァ」。フルーツやスパイスの香りをたっぷり加えた食べ応えのあるドルチェ 写真:Aki Shirahama

素朴な味わいの「ピンツァ」。フルーツやスパイスの香りをたっぷり加えた食べ応えのあるドルチェ 写真:Aki Shirahama

ヴェネト州には、トウモロコシの粉を練った「ポレンタ」を主食とする文化があります。そこから、ポレンタばかり食べている北部の人のことを「ポレントーネ(=ポレンタ喰い)」と冗談を交えて呼ぶことも。

ポレンタは、大きな銅製の釜で1時間弱かけてゆっくりと木べらで混ぜながら作られるものです。時間がかかるので、一般的には多めに作っておき、冷えてしまったものは切り分けてグリルしたりもします。

州の一帯にはトウモロコシ畑が広がる平野がありますが、それは小麦よりもトウモロコシに適した土壌条件があるから。ポレンタの原料であるトウモロコシは、ヴェネトの食生活や食文化に深く関わる食材のひとつになっていて、それは地元のドルチェにももちろん反映されています。

ヴェネト州全土で食べられるドルチェのひとつ「ピンツァ」は、もとは食事用のポレンタの余りを使って作られていたお菓子。ポレンタに卵と粉、そしてリンゴやレーズン、スパイスなどを混ぜ合わせ、型に入れて釜でしっかりと焼き上げます。

食後のドルチェというよりは、朝食にもなるほどしっかりとした食べ応えのあるものです。


ヴェネツィアの素朴な焼き菓子…ザエティ、ブッソラーイ


トウモロコシの粉を混ぜた黄色い色の焼き菓子「ザエティ」。ひし形のような形に焼き上げるのも特徴です 写真:Aki Shirahama

トウモロコシの粉を混ぜた黄色い色の焼き菓子「ザエティ」。ひし形のような形に焼き上げるのも特徴です 写真:Aki Shirahama

ヴェネト州の州都であるヴェネツィアにも、その土地ならではのお菓子があります。その代表的なものが、各種ある素朴な焼き菓子です。

まずは「ザエティ」。これもトウモロコシの粉を使ったもので、その素材を活かした黄色い色と、小麦粉とは違う素朴な口当たりが特徴です。

その名の由来も、イタリア語で“黄色”を表す“ジャッロ”から派生し、ジャレット→ジャレッティ→ザエティと変化した、という歴史があります。


丸い円状とS字型の2種の形の焼き菓子「ブッソラーイ」。ヴェネツィア、ブラーノ島のお菓子です 写真:Aki Shirahama

丸い円状とS字型の2種の形の焼き菓子「ブッソラーイ」。ヴェネツィア、ブラーノ島のお菓子です 写真:Aki Shirahama

また、色鮮やかな壁に塗られた家々が並ぶ島として有名なブラーノ島が発祥の「ブッソラーイ」という焼き菓子も。こちらの特徴はその形。

丸くドーナツ型のようにして焼かれたものと、アルファベットの「S」の形の2種類があります。後者は「エッセ(イタリア語のSの発音)」と呼ばれています。

ちなみに、ヴェネツィア本島より少し南下した漁港の町・キオッジャには、同名の「ブッソラーイ」があります。しかしこれは甘いドルチェではなく塩味で、食事中にパンの代わりに食べるもの。カリカリッとして美味しいですよ。


※ブラーノ島の関連記事:まるでおもちゃ箱みたい!とってもキュートな「ブラーノ島」を知っていますか?


ヴェネツィアの航海の歴史に存在…バイコリ


薄くて平たい形が、魚の「バイコリ(ヴェネツィアの方言でスズキの小型種のこと)」に似ていることから、同名がついたお菓子もあります。

これは粉と卵、砂糖などを混ぜた生地を太い棒状にしてオーブンで半焼きにし、それを薄く切ってから再度オーブンで焼く、というビスコッティ(ビス=2回、コット=焼く)本来のレシピで作られるもの。

2回じっくりと低温で焼きあげるため、水分量が少なく日持ちするので、その昔ヴェネツィア貴族が航海するときに重宝されていたといわれる由緒正しきドルチェです。

卵黄に砂糖を加えて泡立て、マルサラ酒を効かせたデザート「ザバイオーネ」などの横に添えられているので、カリッとしたバイコリですくいながら一緒にいただく、というのが正統派(!?)な食べ方です。


※ビスコッティの関連記事:トスカーナ地方の伝統菓子「カントゥッチ」ってどんな食べ物?


ボロボロとこぼして食べても許される!?…フレゴレッタ(ズブリソローナ)


ボロボロと崩しながら食べるのが正しい食べ方の「フレゴレッタ(ズブリソローナ)」 写真:Aki Shirahama

ボロボロと崩しながら食べるのが正しい食べ方の「フレゴレッタ(ズブリソローナ)」 写真:Aki Shirahama

「フレゴレッタ」とは、「フラージレ(=崩れやすい)」からくる名称です。ヴェネト州南部では、同じものが「ズブリソローナ」と呼ばれます。そしてその語源は「ブリッチョラ(=パンくず)」。

つまり、地域によって呼び名が異なるとはいえ、それらが意味するのはどちらも“ボロボロと壊れやすいお菓子”ということです。

このお菓子も材料にトウモロコシの粉が使われています。そこに小麦粉、アーモンドの粉、豚脂、砂糖などを混ぜ合わせて焼き上げます。

ガリッとした食感が特徴で、それを手で割ってテーブルクロスの上をクズで汚しながら食べるという、気取らない素朴なお菓子です。


“忍耐強い”という名のパドヴァのケーキ…トルタ・パツィエンティーナ


ヴェネツィアの隣町、パドヴァに伝わる伝統トルタ(ケーキ)が「トルタ・パツィエンティーナ」です。

スポンジケーキの間にザバイオーネクリームをはさみ、トルタの周囲にもザバイオーネを塗ります。さらにその上をチョコレートで覆い……と、とても手間がかかるので辛抱強く(=パツィエンツァ)仕上げる必要があることから、この名がつきました。この町のお菓子屋さんでは必ず目にする定番トルタです。


このほかにも、季節や行事の際に食べられる、ヴェネトならではのドルチェも多く存在します。

それぞれの郷土菓子から、その土地と密接に関わる食文化が見えてきますよね。土地の人々が長い間、親しみと愛情をもって食べてきた歴史を感じます。それは現在も、そしてこれからも変わらないことでしょう。

ひとつひとつのドルチェの発祥の由来や背景などを知ると、美味しさも格別ですね。


写真・執筆:Aki Shirahama
Aki Shirahamaブログ「パドヴァのとっておき。」


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情報はライター執筆時のものです。

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